2026年7月4日、国際居合道連盟 鵬玉会は、横浜武道館において「斬 -ZAN- オープントーナメント 第10回全日本居合道選手権大会 自由組太刀®」を開催しました。過去最多となる100名の選手が全国から集い、一般男子では昨年グランドスラムを達成した箕輪朱翼が激戦を制して二連覇を達成。一般女子では樋口陽子が初優勝を飾りました。また、大会中には明思派・新名玉宗宗家から武田鵬玉への免許皆伝授与式ならびに無外流継承の儀が執り行われ、武田鵬玉が「塩川・新名伝無外流 第17代宗家」として継承。競技大会と宗家継承という二つの歴史的節目が重なり、無外流の新たな10年の幕開けを告げる一日となりました。
※ これはプレスリリースとして発行されたものを加筆・転載したものです。

過去最多100名が集結。「自由組太刀」は新たな節目を迎えた
2026年7月4日、横浜武道館で開催された「斬 -ZAN- オープントーナメント 第10回全日本居合道選手権大会 自由組太刀®」には、全国各地から過去最多となる100名の選手が集結しました。
一般男子、一般女子、マスターズ、ユース、ジュニア、リトルジュニア、新人戦の7部門で熱戦が繰り広げられ、会場は選手を応援する大きな歓声に包まれました。
本大会は、流派や所属団体を問わず参加できるオープントーナメントとして開催しています。今大会も複数の流派から出場の打診がありましたが、大会直前に辞退が相次ぎ、他流派との対戦は実現しませんでした。
それでも大会史上初めて100名が出場したことは、「自由組太刀」が競技として着実に成長していることを示しています。
昨年までとは会場を横浜武道館へ移し、観客席と試合場が同じフロアにあるアリーナ形式で開催されたことで、トップ選手同士の間合い、攻防、駆け引きを間近で体感できる大会となりました。
強い選手への憧れは、新たな挑戦者を生みます。
第10回大会は、これまでの10年を締めくくる大会ではなく、次の10年へ向けた新たなスタートとなる一日となりました。
大会結果
一般男子の部
🥇 ご先代新名玉宗賞
箕輪朱翼(神奈川県)
🥈 鶴澤和樹(埼玉県)
🥉 小池敏之(愛知県)
一般女子の部
🥇 当代武田鵬玉賞
樋口陽子(埼玉県)
🥈 西澤明音(長野県)
🥉 石垣真実(東京都)
マスターズの部
🥇 当代武田鵬玉賞
鈴木晃二(神奈川県)
🥈 三遊亭遊馬(東京都)
🥉 澤尾昌広(長野県)
ユースの部
🥇 明治安田賞
大澤幸輝(埼玉県)
🥈 奥村夏未(愛知県)
🥉 大谷志貫(長野県)
ジュニアの部
🥇 横浜市教育委員会賞
中川湊介(神奈川県)
🥈 藤澤滉一朗(東京都)
🥉 加茂豊(神奈川県)
リトルジュニアの部
🥇 明治安田賞
湯澤秀太(神奈川県)
🥈 安池均(神奈川県)
🥉 田口朝陽(東京都)
新人戦の部
🥇 安村凰玉賞
市居嗣之(神奈川県)
🥈 桜馬林勝恩(アイルランド)
🥉 山縣美里(宮城県)
一般男子の部 箕輪朱翼、激戦を制し二連覇達成

一般男子の部では、前年に形・自由組太刀・試し斬りの三大大会を制し、グランドスラムを達成した箕輪朱翼(神奈川県)が、王者として大会に臨みました。
切れ味鋭い体捌きと、相手の動きを見極めて主導権を握る「後の先」を武器に、危なげなく勝ち上がります。
準々決勝では、初のベスト8進出を果たした今井が粘り強い攻撃を見せましたが、箕輪は冷静に対応し準決勝へ進出しました。
迎えた準決勝の相手は、「箕輪キラー」と呼ばれる小池敏之(愛知県)。
互いに「後の先」を狙い、相手の攻撃を捌き合う高度な攻防が続き、決定的な一太刀を許さないまま延長戦へともつれ込みます。
均衡を破ったのは箕輪でした。
東征流短杖の技法から着想を得た一太刀で、小池の脛を正確に捉え一本。この試合は、多くの観客から「今大会最高の一戦」と評される名勝負となりました。
また、長野県の栗木もあと一歩で入賞を逃したものの、「明らかに全体のレベルが上がっている」と大会全体の競技水準の向上を語りました。
決勝は、一昨年と同じ顔合わせとなる鶴澤和樹(埼玉県)との再戦。一昨年の決勝では、小指を骨折した状態で戦い、痛みを抱えながら惜敗した箕輪にとって、雪辱を懸けた舞台でもありました。
「ここまでの激戦で、手の震えが止まらなかった。」
試合後、箕輪はそう振り返ります。
それでも焦ることなく、ひたすら機会を待ち続けました。
開始から約30秒。誘いに応じて鶴澤が抜刀した、その一瞬。
無外流の形「霞」の理合そのままに、鶴澤の小手を鮮やかに捉えて一本。
因縁の決勝戦を制した箕輪は、自由組太刀二連覇という偉業を成し遂げました。
一般女子の部 樋口陽子が初優勝 勝負を決めたのは無外流の形「霞」

一般女子の部では、鵬玉会会長内弟子の奥田裕子を破って勝ち上がった樋口陽子(埼玉県)と、一般男子優勝・箕輪朱翼の指導を受ける西澤明音(長野県)が決勝で対戦しました。
今大会から一般女子の部でも、ベスト4以降は選手の判断によりフェイスガードを外して試合を行えるようになりました。
表情や視線まで伝わる緊張感の中、両者は一歩も譲らない間合いを探ります。
先に動いたのは西澤でした。
樋口は落ち着いて相手を誘い、西澤が抜刀したその瞬間、二の腕を鮮やかに捉えて一本。
この決定打は、無外流の形「霞」の理合によるものでした。
奇しくも、この一太刀は直後に行われた一般男子決勝で、師である箕輪朱翼が鶴澤和樹を破った一本と、まったく同じ「霞」によるものでした。
同じ大会の男女決勝で、同じ形が勝敗を分ける。
無外流に伝わる形が、単なる演武ではなく、実際の攻防の中で生きる技であることを象徴する場面となりました。
樋口は初優勝を果たし、当代武田鵬玉賞を受賞。西澤も準優勝ながら、新星の登場を印象づける戦いぶりを見せました。
マスターズ、ユース、ジュニア、新人戦 次代を担う選手たちが躍動
マスターズの部では、優勝候補と目されていた衛藤豊、森井両選手が準決勝までに敗退する波乱の展開となりました。
優勝したのは鈴木晃二(神奈川県)。実力者がひしめくマスターズは年々競技レベルを高めており、今や一般男子に劣らぬ激戦区となりつつあることを印象づけました。
ユースの部でも熱戦が続き、大澤幸輝(埼玉県)が優勝。若い世代の技術向上は目を見張るものがあり、鵬玉会の将来を支える層の厚さを感じさせる大会となりました。
ジュニアの部では、中川湊介(神奈川県)が優勝し、横浜市教育委員会賞を受賞。本大会での受賞歴は、進学時の調査書にも記載できる実績となり、競技への励みとして大きな意味を持つものとなっています。
また、定着した新人戦では、湘南藤沢支部で衛藤豊の指導を受ける市居嗣之(神奈川県)が優勝。準優勝には、大会出場のためアイルランドから来日した桜馬林勝恩(オーバリン・ショーン)が入り、自由組太刀のメダルを祖国アイルランドへ持ち帰りました。
世代や国境を越え、多くの選手がそれぞれの目標に向かって挑戦する姿は、第10回大会を象徴する光景の一つとなりました。
免許皆伝授与式・無外流継承の儀
大会の途中、明思派・新名玉宗宗家から武田鵬玉への免許皆伝授与式ならびに無外流継承の儀が、厳粛に執り行われました。
式典には、北辰一刀流玄武館宗家十六世・小西真円一之先生、株式会社柘製作所・柘会長をはじめ、多くの来賓が臨席。司会は、「ちびまる子ちゃん」「芸能人格付けチェック」などで知られるナレーター・木村匡也氏が務めました。
また、日本文化への深い理解で知られる高市早苗内閣総理大臣からは、自ら文面を作成した祝電が寄せられ、木村氏によって披露されると、会場は大きな拍手に包まれました。

免許皆伝授与に続き、明思派・新名玉宗宗家から武田鵬玉へ宗家の席が譲られ、**武田鵬玉は「塩川・新名伝無外流 第17代宗家」**となりました。


その瞬間、会場の壁面には、武田鵬玉が大会当日の朝に揮毫した縦約4メートル、横約3メートルの巨大作品「無外」が掲げられ、会場全体が新たな門出を見守りました。

塩川寶祥宗家から明思派・新名玉宗宗家へと受け継がれてきた道統は、武田鵬玉へと継承され、新たな一歩を踏み出しました。
鵬玉会では、この歴史的な継承を特別に演出するのではなく、事実をありのままに記録し、後世へ伝えていくことを大切にしています。
だからこそ、この日の出来事も、写真、映像、記録とともに公開し、未来の門人たちが「あの日、何が受け継がれたのか」を自ら確かめられる形で残していきます。



