わが師 新名玉宗と
本来の無外流
1.「今から本来の無外流を稽古するから道場に来い」
先日、わが師、無外流明思派 新名玉宗宗家からSMSが届いた。
「昔、塩川先生が
『無外流の形稽古は、命を取り合う時には遣えない。』
『どこで誰が見ているかもしれないのに、刃筋や刀の扱い方が解るモノでは、殺し合いには遣「えない。』
『本当の刃筋や刀の扱い方は、暗い夜や閉ざされた場所で稽古していた。』
『今、世の中の人達が稽古している形は、誰が見てもよいモノだ』
と言われました。」
「誰が見てもよいモノだ」というのは、見られたら困るものではないよ、と言うことだろう。
「それで私は、夜中の0時頃「今から稽古するから道場に来い」と言われて、本来の無外流(組太刀=剣術)を教わりました。
誰にでも簡単に教える内容ではありませんから、この本来の無外流(組太刀=剣術)は伝承部員だけに伝えています。」
新名宗家は伝承部員と呼ぶものを構成されていて、実は私もそこに名前が連ねてある。
無外流明思派の技術指導部員でもある。
2. 「武田さんにはもう本来の無外流は教えたじゃないか」
さて、このSMSに戻ろう。
ご宗家とは毎月直接・個人指導を今も受けている。
まだまだ学ぶものがあるのだ。
かつて週に2回だったものが、週に1回となり、隔週になり、今では月に1回となった。
(ご宗家の奥様がご他界されてしばらくは中止されていたが、再開されたのは2025年の今年。ご葬儀受付は鵬玉会内弟子でさせていただいた)
このSMSが届いてすぐの個人指導のとき、
「塩川先生のおっしゃる『本来の無外流』を、私にもご教授いただけませんか?」
と言うと、
「武田さんにはもう教えたじゃないか。」と笑っていらっしゃった。
居合形の太刀打之形が5本、脇差之形が5本、そのひざが悪い人用の5本、それを太刀に持ち替えたものが5本。
ここまでで無外流の組太刀は20本。
剣術形が5本で、ここまでで25本。
神道流剣術が太刀の八通が8本、脇差の四通が4本。この12本を合わせて37本。
しかし、塩川・新名伝はこれでは終わらない。
「敵によって転化をなすは兵法の定理なり」と言うが、相手の動きにこちらが動きを変えただけで、実は同じ哲学でさばいていると考えればこの37本は1本と言っていいかもしれない。
しかし実はその37本はさらに変化する。それが塩川・新名伝だ。
この変化したものには無外流に特徴的な考え方、哲学がある。
それを押さえて動きを分類していくと、フリースタイルで対応ができるようになる。
これは極真空手で「命のとりあい」寸前の戦いをし続けたから見えたことなのだと私は理解している。あの山ほどの経験がなければ、すべての組太刀を個別に覚えようとしたかもしれない。
気づけば、無外流の隠された剣術をすべて教えていただいていた。
その内容は非公開なので、鵬玉会一門と言えども、それを知っているのは新名宗家が許された、安村凰玉師範のみだが、鵬玉会の自由組太刀はその上に成り立っているのだ。
そして私の研究の旅も続いている。
それは流祖が残した「意味はわかるかな?」と後世の弟子に残した謎解きの旅であり、塩川宗家、新名宗家の課題の旅だ。
なんとこの道は愉快なのだろうか。