心清らかなれば、傘は刀に見える|安村凰玉が語る「マドンナの鵬玉会」【第二回】

安村凰玉が語る

マドンナの鵬玉会【第二回】

居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるのには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。

望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。

その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。

安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。

その過激におもしろい物語の第二回目です。

ゲスト|安村凰玉
インタビュー|田中知博 副長補佐
構成・編集|鵬玉会編集部

※本稿中の「会長」は、当時の呼称です。武田鵬玉は2026年7月、塩川・新名伝 無外流第17代宗家を継承しました。

ガラス張りの神田道場

安村凰玉副長(以下「副長」): そして、体験の日。場所は、ガラス張りの当時の神田道場。ドキドキしながら行ったら、会長がすでに正座をして準備をしていました。ところが私は、のっけから入口を間違えて(笑)。

田中知博副長補佐(以下「タナカ」): (笑)。

副長: 会長は正座したまま、五本の指をきれいに揃えて、すっと正しい入口を示すのよ、これが。その姿が強烈で。

タナカ: 印象的だったんですね?

副長: 指先まで揃った、無駄のない所作。居合がどういうものなのかも、まだ何も分からない私にとって、会長のその姿そのものが、初めて目の前で見た「あー! これが武道だ!」って。

タナカ: 武道の象徴になったんですね? いや、人数がいなかったせいもあるでしょうが、そんな状況で、後に宗家になる方に個別に体験をさせてもらえる。そんな時代がうらやましい!

副長: 今となって思うとね、あれは単に道場の入口を示してくださったんじゃない。私に、この「道」の入口を指し示してくださった瞬間だったように感じています。

タナカ: かー! うらやましい!

副長: 体験の最後に、会長が形を見せてくださいました。

タナカ: えええ! さらにうらやましい!

副長: 「極真空手を長く修行してきた人」と聞いてたわけよ。だから、力強さが前面に出ると想像していたのよ。

タナカ: 「軽くて重い」「薄くて厚い」という、一見矛盾するものが同時に成り立つような感覚がありますが、なんであの方は「柔らかくて強い」んでしょう。私にはまったく分かりません。

副長: そう! 目の前で見た居合は、力強いのに、とても美しかった。もう、わけが分からない。
そして会長から、こう言われました。

「侍の所作は生き残りの術なんです。だから、無駄な動きはないんです」

美しく見せるために美しいのではない。無駄を削ぎ落とした結果として、美しい。

タナカ: 本物を見た興奮がありますよね。

副長: そう! 私が漠然と思っていた「やるなら本物を」に、どこかで重なってたんだと思う。

「これをやれるんだ!」

体験を終えて帰る時は、ワクワクしていました。

タナカ: いいですねえ!

副長: 「行っちゃった。始めちゃった」
そんな気持ちで、もうね、子どもみたい。