できないままでいると、
できない人になる
安村凰玉が語る
マドンナの鵬玉会【第四回】
居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるのには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。
望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。
その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。
安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。
その過激におもしろい物語の第四回目です。
ゲスト|安村凰玉
インタビュー|田中知博 副長補佐
構成・編集|鵬玉会編集部
※本文中の「武田会長」は、現在の塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉を指します。本連載では、当時の呼称に従い「会長」と表記します。

最初の壁は、刃音だった
田中知博副長補佐(以下、タナカ); 前回は、「女版・武田鵬玉を目指そう」で終わりました。
目指すものが決まったのはよかった。ところが、そこから大変だったんですよね。
何があったんですか?
安村凰玉副長(以下、副長); 入門してしばらく経っても、私は決して要領のいい門人ではなかったんだよねえ。
むしろ、覚えが悪い。
体育は得意だったのに……。
タナカ; 小堀さんとかが活躍されていたからじゃないですか? あの人は、どんどん吸収して凄かったから。
副長; 一つ教えていただいても、すぐに身体がその通りに動いてくれない。
今振り返れば、本当に一個、一個。なんなら、ほとんどすべての動きに引っかかってきたと思う。
タナカ; 副長もですか?!
副長; すべての動きに意味がある、ということは分かってきたけどねえ。
タナカ; そんなこと、想像つきませんよ。
副長; そもそも、素振りからしてダメ。
周りからは、
「ヒュン! ヒュン!」
と、軽やかな刃音が聞こえる。
タナカ; それ、小堀さんでしょう?
副長; そう!
人の気持ちも考えずに、「気持ちいいなあ!」くらいに思ってたと思うよ(笑)。
悔しいけど、軽やかな刃音なのよ、彼は。
ところが、私が振ると、
「ムン!」
……何、この音(笑)。
考えたら、腹が立ってきた(笑)。
タナカ; (笑)。
副長; たまに、
「うっ!」
みたいな音がしたり。
ひどい時には、
無音。
何も鳴らない。
タナカ; あれ、最初は気になりますよねえ。
副長; ねえ。
まあ、刃筋が通っていないんだけど、武田会長からは、
「刃音を鳴らすために振ってはいけません。正しく振れた結果、刃音が鳴るんです」
と言われる。
でも、そうは言ってもねえ。
タナカ; 「おっしゃることは分かります」って、言い返したくなりますよね(笑)。
副長; 「会長のおっしゃる通りです」
でも――。
鳴らしたい。
だって、周りはみんな「ヒュン! ヒュン!」なんです。
小堀さんは「ヒュン」を通り越して、
「ビューン!」
ヒデさんも、
「ヒュン!」
私だけ、
「ムン!」
タナカ; 一緒に稽古している人たちが、水滸伝の豪傑みたいな雰囲気ですね。
副長; どうしたら、あの音が出るんだろう。
自分の刀がどう通れば、正しい刃筋になるんだろう。
タナカ; 追い詰められてますね(笑)。
副長; ……そこで私は、禁忌を犯しました(笑)。
タナカ; どうしたんですか?


