血振りは足を引く|安村凰玉が語る マドンナの鵬玉会【第六回】

血振りは足を引く

安村凰玉が語る

マドンナの鵬玉会【第六回】

居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるのには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。

望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。

その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。

安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。

その過激におもしろい第六回のはじまりです。

ゲスト|安村凰玉

インタビュー|田中知博 副長補佐

構成・編集|鵬玉会編集部

安村凰玉
田中知博

※本文中の「武田会長」は、2026年7月4日に塩川・新名伝 無外流第17代宗家を継承した武田鵬玉の、当時の呼称です。

登場人物

安村凰玉(やすむら おうぎょく)

国際居合道連盟 鵬玉会副長。錬士七段。鵬玉会草創期に入門し、武田鵬玉の居合を追い続けてきた女性剣士。鵬玉会初の六段となり、2026年7月4日、横浜武道館において錬士七段を允許され、昇段した。武道専門誌『月刊秘伝』2020年11月号の『秘伝』女子武道家名鑑に、女性の居合道家として初めて掲載。NBCのオリンピック特別番組、パナソニックの映像作品への出演など、国内外のメディア出演も多数。

田中知博(たなか ともひろ)

国際居合道連盟 鵬玉会副長補佐。塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉の内弟子。宗家のそばで無外流の技と思想を学びながら、鵬玉会の指導と組織運営を支える。オンラインチーム MUGAI Broadcasting を率い、国内外をつなぐ鵬玉会のオンライン部門を牽引する。本連載では、安村凰玉の大貫禄におびえながら、ときどき命知らずな質問を投げかける聞き手を務める。

生木なんて裂いたことがない

田中知博副長補佐(以下、タナカ); さあ、今回は血振りじゃないかと、みんな想像してますよ。

安村凰玉副長(以下、副長); 当たり!

武田会長から、

「敵との間合いを取るために、出した右足を引いて血振りをします」

と教えていただきました。

「なるほど、血振りでは右足を引くのね」

タナカ; ふむふむ。

副長; 隣では、先輩たちも一緒に血振りをしてるわけよ。

チラッと見なくても、みんな、ものすごくキレがあるのが分かる、って分かる?

タナカ; 分かります! 嫌~な感じでしょ?

副長; そう! ……それに比べて、私の血振りは、なんとも歯切れが悪い。

タナカ; 想像つきませんよ。

副長; 武田会長から言われたよ。

「生木を裂くように血振りをしてください」

……生木を裂く。

「生木……生の木……」

これは、しばらく悩んだよ。

そもそも、生木なんて裂いたことがないし、イメージがつかない。

どんな感覚なのか、まったく分からない。

タナカさん、一か月に何回くらい生木を見る?

タナカ; すみません。生木を見たことがありません。

副長; 友人と居酒屋へ行ったのよ。

タナカ; 朝まで呑んだんですか?

副長; そんな話じゃなくて……。

料理が来て、割り箸を手に取って、割ろうとしたら――。

タナカ; そこで開眼したんですね?(笑)

副長; 割り箸が固い!

なかなか割れない。

「うーーーー……!」

力を込める。

タナカ; 漏らしそうですね。

副長; こら!

タナカ; あまり力むと……。

副長; ……そして、

パン!

割れた。

「……」

その瞬間、

「これー!」(笑)

タナカ; 開眼だー!

副長; 血振りっていうのは、じわじわ開くんじゃない。

力を溜めて、

パン!

と一気に裂くのよ!

タナカ; 生木を裂いたことはないけど、固い割り箸なら分かるぞ! ですね!

副長; そう! これなら私にも分かる。

その感覚を持ち帰って、血振りをしたのよ!

タナカ; もう分かりました。リビングですね?

副長; まだ満足できるものじゃなかったけどね。少しずつ、身体の使い方が分かってきたのよ。