失格して、ようやく信じられた

失格して、ようやく信じられた

安村凰玉が語る

「マドンナの鵬玉会」【第十三回】

居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。

望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。

その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。

安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。

その過激におもしろい物語、第十三回の始まりです。

ゲスト|安村凰玉

インタビュー|田中知博 副長補佐

構成・編集|鵬玉会編集部

※本文では当時の呼称に従い、塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉を「武田会長」「会長」と表記します。

登場人物

安村凰玉(やすむら おうぎょく)

国際居合道連盟 鵬玉会副長。錬士七段。鵬玉会草創期に入門し、武田鵬玉の居合を追い続けてきた女性剣士。鵬玉会初の六段となり、2026年7月4日、横浜武道館において錬士七段を允許された。武道専門誌『月刊秘伝』の「女性武道家名鑑」に、女性の居合道家として初めて掲載。NBCのオリンピック特別番組、パナソニックの映像作品への出演など、国内外のメディア出演も多数。

田中知博(たなか ともひろ)

国際居合道連盟 鵬玉会副長補佐。塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉の内弟子。宗家のそばで無外流の技と思想を学びながら、鵬玉会の指導と組織運営を支える。オンラインチーム MUGAI Broadcasting を率い、国内外をつなぐ鵬玉会のオンライン部門を牽引する。本連載では、安村凰玉の大貫禄におびえながら、ときどき命知らずな質問を投げかける聞き手を務める。

安村凰玉
田中知博

ゴジラが、こちらへやってくる

田中知博副長補佐(以下、タナカ) 今回は、当時の武田会長から「お情け昇段」と言われた初段時代からの脱却ですね。

安村凰玉副長(以下、副長) 初めて、財団法人無外流の国際大会に出場することになりました。

大会の前日には、「前日稽古会」というものがあったわけ。

タナカ ああ、覚えています。先代・新名ご宗家が、参加者を見て回られる稽古会ですね。

副長 自分の居合を“クリーニング”する。そんな確認のチャンスよね。

体育館の向こうから、

「なんだ! その形は!」

「誰から習ったんだ!」

という怒号が聞こえてくるわけよ。

タナカ ……先代ですか?

副長 そう。

タナカ 今の武田宗家を通して見る先代は、慈愛に満ちた、大変お優しい方に見えます。ところが、そのフィルターが外れた途端、厳しく、苛烈な方に見えますよね。

副長 そのときの、私の気持ちを考えてよ。

「……」

タナカ むむむ!

副長 大掃除のときとは、まるで別人のように厳しい。

そりゃそうよね。

ご宗家だもの。

そして――。

こっちに、いらした……。

いやあ! 来ないでえ!

タナカ ゴジラが登場した感じですね。