エンジン、フル回転!
安村凰玉が語る
マドンナの鵬玉会【第十四回】
エンジン、フル回転!
居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。
望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。
その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。
安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。
その過激におもしろい第十四回のはじまりです。
ゲスト|安村凰玉
インタビュー|田中知博 副長補佐
構成・編集|鵬玉会編集部


登場人物
安村凰玉(やすむら おうぎょく)|プロフィール
国際居合道連盟 鵬玉会副長。錬士七段。鵬玉会草創期に入門し、武田鵬玉の居合を追い続けてきた女性剣士。鵬玉会初の六段となり、2026年7月4日、横浜武道館において錬士七段を允許された。武道専門誌『月刊秘伝』の「女性武道家名鑑」に、女性の居合道家として初めて掲載。NBCのオリンピック特別番組、パナソニックの映像作品への出演など、国内外のメディア出演も多数。
田中知博(たなか ともひろ)|プロフィール
国際居合道連盟 鵬玉会副長補佐。塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉の内弟子。宗家のそばで無外流の技と思想を学びながら、鵬玉会の指導と組織運営を支える。オンラインチーム MUGAI Broadcasting を率い、国内外をつなぐ鵬玉会のオンライン部門を牽引する。本連載では、安村凰玉の大貫禄におびえながら、ときどき命知らずな質問を投げかける聞き手を務める。
「指導の系統による」
田中知博副長補佐(以下タナカ); いよいよ、弐段になったところまでお聞きしました。
安村凰玉副長(以下副長); ここから、どうすればいいんだろう?って、ナーバスになったことない?
タナカ; あります! 形ってシンプルだから、できるようになった気もするし、何を目指せばいいのか分からなくなるときですよね?
副長; そんな私に、武田会長からメッセージが届くのよ。
タナカ; うわ、なんか興味ある!
副長; そこには、私の居合について、
「静の中に動があるのが君の特徴。これは指導の系統によると私は判断している」
と書かれていました。
タナカ; 昔から禅問答みたいなことをおっしゃっていたんですね。う~ん。
副長; 「……」
何度も読みましたよ。
武田会長が、私の居合を文字にして、はっきり褒めてくださった。
私は、そう受け取りました。
武田会長に褒めていただいたのは、この時が初めてだったように思います。
タナカ; おまけじゃなくなったじゃないですか! 嬉しかったでしょう?
副長; 大人でも、褒められると嬉しいんだって気づくよねえ!
もちろん、嬉しい。
でも、なんというか。
「わーい!」でもない。
タナカ; 禅問答ですからね(笑)。
副長; 「ありがとうございます!」でもない。
胸の奥から、何とも言葉にできないものが込み上げてきたのよ。
タナカ; 泣いたとか(笑)?
副長; 「……」
タナカ; あ! ビンゴですか? それは失礼しました!
副長; (笑)。
あの時の私の気持ちを正確に表す言葉を、私は知らない。
初めて女性の居合を見たあの日から、勝手に、
「これじゃない。私は女版・武田鵬玉を目指そう」
と、おこがましくも決めていたの、覚えてる?
タナカ; 覚えています。
副長; それからずっと、武田会長を見てきたのよ。
なんとか盗もう、盗もうって。
タナカ; 怖いですね。
副長; 会長が刀を振れば、見る。
間、角度、タイミング、身体の使い方。
見て、まねをする。
できなければ、持ち帰る。
録画するような失礼なことはしない。
目に焼き付ける。
タナカ; 副長なら、目からデータを抜き出せそうですね。
副長; 本当よ。
それを繰り返したからね。
たまに、会長がぼんやりしていることがあるんだけど、そんなときは、
「あ、お腹が空いているんだな」
というところまでは理解したからね。
タナカ; ギャハハ(笑)。内弟子でも、そこまで分かる者はいませんよ。
副長; その会長から、
「指導の系統による」
と言っていただいた。
これは、嬉しかったなあ。
そして、そのメールには続きがありました。
タナカ; ワクワク!


