最初の門人は、鏡の中の自分|安村凰玉が語る マドンナの鵬玉会【第十六回】

最初の門人は、鏡の中の自分

安村凰玉が語る

「マドンナの鵬玉会」【第十六回】

居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。

望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。

その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。

安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。

その過激におもしろい物語、第十六回の始まりです。

ゲスト|安村凰玉
インタビュー|田中知博 副長補佐
構成・編集|鵬玉会編集部

※本文では当時の呼称に従い、塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉を「武田会長」「会長」と表記します。

安村凰玉
田中知博

登場人物

安村凰玉(やすむら おうぎょく)|プロフィール

国際居合道連盟 鵬玉会副長。錬士七段。鵬玉会草創期に入門し、武田鵬玉の居合を追い続けてきた女性剣士。鵬玉会初の六段となり、2026年7月4日、横浜武道館において錬士七段を允許された。武道専門誌『月刊秘伝』2020年11月号の「『秘伝』女子武道家名鑑」に、女性の居合道家として初めて掲載。NBCのオリンピック特別番組、パナソニックの映像作品への出演など、国内外のメディア出演も多数。

田中知博(たなか ともひろ)|プロフィール

国際居合道連盟 鵬玉会副長補佐。塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉の内弟子。宗家のそばで無外流の技と思想を学びながら、鵬玉会の指導と組織運営を支える。オンラインチーム MUGAI Broadcasting を率い、国内外をつなぐ鵬玉会のオンライン部門を牽引する。本連載では、安村凰玉の大貫禄におびえながら、ときどき命知らずな質問を投げかける聞き手を務める。

会長が鼻声だった

田中知博副長補佐(以下、タナカ) 前回は「会長が鼻声だった」という、まるで「赤鼻のトナカイ」のような小見出しで終わりました。

安村凰玉副長(以下、副長) ご本人はそんな素振りを見せませんでしたが、たぶん、しんどかったんだと思います。

それで私は、考えたのよ。

タナカ 何を?

副長 出しゃばるのも、どうなんだろう。

私はまだ初段です。

タナカ えっ、まだ弐段でもない頃の話ですか?

副長 そこんとこ、ナイショにして、ヨロシク!

タナカ ナイショって……みんな読んでますよ?

副長 自分が力不足なのは、一番よく分かっていたんだけどねえ。

でも、神田道場で週に三日あった稽古が、試し斬りを含めて四日になり、さらに二か所の公共施設でも稽古が始まって……。

タナカ えっ! 週に六日ですか?

副長 会長は、当時ほかの仕事もしていたでしょ? おまけにウェブサイトを作って、問い合わせに対応して、動画も作って……。

タナカ 改めて考えると驚異的ですね。

もう、どうかしています(笑)。

副長 きついだろうなあ、と思ってね。

入ったばかりの人たちになら、自分が習ってきた範囲で、ある程度はお手伝いできるんじゃないか。

それが最初の発想でした。

タナカ 会長からしたら、ありがたかったでしょうね。

副長 何より、会長に一日でも休んでもらいたかったのよ。

それで、思い切って言いました。

「差し支えなければ、木曜日だけ、お手伝いさせていただけませんか? 会長は一日、お休みしてください」

タナカ どんな顔をして言ったんですか?

副長 断られるかもしれないと思って、ドキドキしながら。

タナカ 「十年早い」と言われま……せんよねえ。

副長 会長は、ぱっと目を見開いたのよ!

タナカ ギャハハ! うれしかったんだ!

副長 そして、

「ありがとう」

だって!

タナカ 安村場所長の誕生ですね!