一本の帯が、一つの道場になった
安村凰玉が語る
「マドンナの鵬玉会」【第十七回】
居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。
望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。
その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。
安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。
その過激におもしろい物語、第十七回の始まりです。
ゲスト|安村凰玉
インタビュー|田中知博 副長補佐
構成・編集|鵬玉会編集部
※本文では当時の呼称に従い、塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉を「武田会長」「会長」と表記します。


登場人物
安村凰玉(やすむら おうぎょく)|プロフィール
国際居合道連盟 鵬玉会副長。錬士七段。鵬玉会草創期に入門し、武田鵬玉の居合を追い続けてきた女性剣士。鵬玉会初の六段となり、2026年7月4日、横浜武道館において錬士七段を允許された。武道専門誌『月刊秘伝』2020年11月号の「『秘伝』女子武道家名鑑」に、女性の居合道家として初めて掲載。NBCのオリンピック特別番組、パナソニックの映像作品への出演など、国内外のメディア出演も多数。
田中知博(たなか ともひろ)|プロフィール
国際居合道連盟 鵬玉会副長補佐。塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉の内弟子。宗家のそばで無外流の技と思想を学びながら、鵬玉会の指導と組織運営を支える。オンラインチーム MUGAI Broadcasting を率い、国内外をつなぐ鵬玉会のオンライン部門を牽引する。本連載では、安村凰玉の大貫禄におびえながら、ときどき命知らずな質問を投げかける聞き手を務める。
見せる側にもなった
田中知博副長補佐(以下、タナカ) 「『マドンナの鵬玉会』、読んでます!おもしろいですよねえ!」って話しかけられましたよ!びっくりです!
安村凰玉副長(以下、副長) なんかこんなこと言っていいのか?って、セーブがかかりそうね(笑)。
タナカ 楽しみにしている人がいるみたいですから、自然体でいきましょう。さて、前回は、安村場所長の誕生までをお聞きしました。
副長 場所長になったといってもねえ、体験者への対応は、引き続き会長がやっていたのよ。
でも、金曜日や土曜日に女性の体験者が来ると、会長は私に演武をさせてくれるようになりました。
タナカ もちろん、最後は会長の形で締めていたんでしょ?
副長 そう。
でも、最初から会長の力強く美しい形だけを見せるんじゃなくて、まずは、入門してまだそれほど経っていない女性の私が形を見せるのがいいのよ。
「このくらいなら、私にも分かる」
と思えるでしょ?
タナカ 会長は、よくおっしゃいますよね。
「初心者の場合、俺が形をやろうが、誰がやろうが、まだ細かい違いは分からんよ。それなら、自分に近い人がやった方がいい」
と。
二人 でも、違いは分かるよねえ。
タナカ まあ、女性の体験者にとっては、その方が自分の一年後、二年後を現実的に想像できるんでしょうね。
副長 「続けたら、私もあんなふうになれるかもしれない」って感じ?
少し先を歩いている人として、私が演武する。
最初の頃は緊張して、刀がプルプルしていましたけど(笑)。
タナカ そういえば、エッヘン、私は後になって会長の内弟子になりましたが、会長はよく、
「ああやって人前で演武させると、うまくなるとよ」
とおっしゃっていました。
副長 そう!
そんな機会を何度もいただいたことで、私自身も、人前で形を行うことに慣れていったんだよねえ。


