鵬玉会が、鵬玉会になった日
安村凰玉が語る
マドンナの鵬玉会【第十八回】
居合に憧れながらも、「これは自分には縁がない。だって女性だし、もう始めるには遅いだろう」と思い込んでいた一人の女性がいた。
望んでいたのは、道場の隅で邪魔にならないように刀を振ることだけ。大会も、昇段も、人前での演武も考えていなかった。
その女性は後に、国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉となるのです。
安村凰玉は、なぜ鵬玉会を選び、武田鵬玉の居合を追い始めたのか。
その過激におもしろい物語、第十八回の始まりです。
ゲスト|安村凰玉
インタビュー|田中知博 副長補佐
構成・編集|鵬玉会編集部


登場人物
安村凰玉(やすむら おうぎょく) プロフィール
国際居合道連盟 鵬玉会副長。錬士七段。鵬玉会草創期に入門し、武田鵬玉の居合を追い続けてきた女性剣士。鵬玉会初の六段となり、2026年7月4日、横浜武道館において錬士七段を允許され、昇段した。武道専門誌『月刊秘伝』の「女性武道家名鑑」に、女性の居合道家として初めて掲載。NBCのオリンピック特別番組、パナソニックの映像作品への出演など、国内外のメディア出演も多数。
田中知博(たなか ともひろ) プロフィール
国際居合道連盟 鵬玉会副長補佐。塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉の内弟子。宗家のそばで無外流の技と思想を学びながら、鵬玉会の指導と組織運営を支える。オンラインチーム MUGAI Broadcasting を率い、国内外をつなぐ鵬玉会のオンライン部門を牽引する。本連載では、安村凰玉の大貫禄におびえながら、ときどき命知らずな質問を投げかける聞き手を務める。
※本文では当時の呼称に従い、塩川・新名伝 無外流第17代宗家・武田鵬玉を「武田会長」「会長」と表記します。
フローリングで大開脚
田中知博副長補佐(以下、タナカ); 小堀さんを想定したリビング組太刀、開始! というところからスタートです。
安村凰玉副長(以下、副長); そこへ仕太刀の私が、サイドに入って――
タナカ; ついに小堀さんに勝つわけですね?
副長; ええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!
タナカ; どうしたんですかあ!?
小堀さんだから、打太刀なのに形の約束を破って、勝ちに来たとか!?
副長; 「…………」
フローリングに靴下って、滑るのねーーーーーーーーー!
タナカ; ああ! そう来たかあ!
副長; とんでもない大開脚!
タナカ; ギャハハ!
副長; 覚えていない時期って、なんだか胸が重たいのよ。
タナカ; 約束組太刀を、まだ覚えられていなかったんですね?
副長; 「まだ覚えていない」
タナカ; 「まだできない」
副長; そう。そういうものが、ずっと自分の中に残っている感じがする。
タナカ; まず覚えないことには、どうにもなりませんからねえ。
副長; そうね。覚えないとね。
でも、どれだけ時間がかかっても、覚えた瞬間、心にかかっていた雲が晴れるような感覚があるじゃない?
タナカ; なんだか成長してきた感じですね。
副長; この頃には、それが少し分かるようになっていました。
タナカ; できるようになったんですね?
副長; 「できるようになった」なんて、永遠に言える気がしないけどね(笑)。
それでも、小堀さんと組んで、何度も何度も稽古する日々を重ねました。
未来なんて、考えたこともなかった
タナカ; しかし、鵬玉会の初期の人たちって、なんというか、血の結束みたいな濃さがありますよね(笑)。
副長; なぜ当時の仲間とのつながりが、これほど濃いのか。
なぜ遠慮したり、ためらったりせず、前へ進んでこられたのか。
それには、理由があるのよ。


