安村凰玉|マドンナの鵬玉会

安村凰玉|マドンナの鵬玉会

けなげな初心者が、大貫禄の副長になるまで!

国際居合道連盟 鵬玉会副長、錬士七段・安村凰玉。
『月刊秘伝』の「女性武道家名鑑」に、「女性の居合道家」として初めて掲載された武道家です。

しかし、入門した頃から大会や昇段、指導者を目指していたわけではありません。
「道場の隅っこで、邪魔にならないように刀を振らせてもらえれば、それでいい」

そう思っていた一人の初心者は、どのようにして鵬玉会副長、錬士七段となったのでしょうか。

本連載では、安村凰玉が見てきた武田鵬玉、草創期から現在へと続く鵬玉会の歩み、そして一人の女性武道家が指導者になるまでの修行の日々を紹介します。

聞き手は、田中知博副長補佐。

笑いながら読んでいるうちに、「鵬玉会とは何か」が少しずつ見えてくる人物連載です。


語り|安村凰玉副長
インタビュー|田中知博副長補佐
構成・編集|鵬玉会編集部


安村凰玉プロフィール

国際居合道連盟 鵬玉会副長。錬士七段。

鵬玉会草創期に入門し、武田鵬玉の指導を受けながら、形、組太刀、試し斬りの修行を重ねてきました。

国内外での演武、各種大会、映像作品、テレビCM、海外放送局の番組制作などに参加。現在は鵬玉会副長として、技術指導と後進の育成にあたっています。

安村凰玉は、武道未経験から鵬玉会草創期に入門し、修行を重ねてきた女性剣士です。本連載は、本人へのインタビューに基づき、初心者時代から錬士七段に至るまでの歩みを記録しています。


マドンナの鵬玉会

第一回

「自分には縁のない世界」から始まった

家と会社を往復する毎日の中で、自分と向き合える時間と、日本人として学べる文化を求めていた安村凰玉。

しかし、居合は男性が子どもの頃から修行するものであり、大人の女性である自分には縁のない世界だと思っていました。

いくつかの団体を見比べる中で、安村が重視したのは、「何を習うか」だけではなく「誰に習うか」。
自らの言葉で理念を語り、表に立っていた武田鵬玉会長に興味を持ちながらも、問い合わせるまでには二か月を要しました。

ソフトボール部だった高校時代、二の腕をめぐる攻防、猛獣使いになりかけた可能性――。

安村凰玉と田中知博の丁々発止の掛け合いとともに、すべての始まりをたどります。


第二回|心清らかなれば、傘は刀に見える

ガラス張りの神田道場で、安村凰玉が初めて目にした武田鵬玉の居合。

力強いのに美しい。その姿に「やるなら本物を」という思いを重ね、勢いのまま入門します。ところが、初稽古では何も覚えていない。自宅での稽古に選んだのは、なんとビニール傘でした。

後に鵬玉会副長、錬士七段となる安村凰玉にも、刀礼すら分からず、毎日の筋肉痛に苦しんだ初心者時代があったのです。

ビニール傘、稽古ノート、そして待ちに待った自分の居合刀。

現在の大貫禄からは想像もできない、初々しくも過激におもしろい修行の始まりです。

第三回|「はーん、これが修行ってものなのねー」

稽古場のそばではしゃぐ、幼いすみれと菊。
武道を始めたばかりの安村凰玉は、それさえも「集中を切らさないための修行」だと思い込んでいた。
ところが、後になって分かった真相は――武田会長が、ただの子煩悩だっただけ(笑)。

やがて安村凰玉は、「女性の居合とは何か」という新たな迷いにぶつかります。
しかし、他会の女性剣士の演武を見たことで気づきました。
男性の居合、女性の居合と分けて考える必要はない。
自分が目指すのは、強く、力任せではなく、そして美しい、武田鵬玉の居合だ。

「女版・武田鵬玉を目指そう」

見て、真似て、追いかけた先で、先代・新名玉宗宗家から告げられた言葉とは。

第四回|できないままでいると、できない人になる

周囲の刀から聞こえるのは、軽やかな「ヒュン!」。

ところが、安村凰玉が振ると――

「ムン!」

鳴らないなら、鳴るまで振る。できないなら、できるようになるまでやる。

夜のリビングでついに響いた、たった一度の「ヒュン!」。しかし、長い素振りを終えて進んだ「基本一」では、今度は鞘が悲鳴を上げ始めます(笑)。

現在の大貫禄からは想像もつかない、安村凰玉の悪戦苦闘の初心者時代。第四回は、「できない」を一つずつ乗り越えていく物語です。

第五回|セミを飛ばすのよー!

刀と鞘の角度を合わせ、後方斜め上のエアコンを突く。大きな「人」の字を思い描き、最後は切先にしがみついたセミを遠くへ飛ばす――。

今や錬士七段となった安村凰玉にも、言葉で教わったことを身体で理解するまで、何度も悩み、試し続けた初心者時代がありました。

笑って読めて、居合の上達にもつながる、安村流の試行錯誤。第五回では、抜刀から振りかぶり、二の太刀へと、一歩ずつ身体感覚をつかんでいく過程を語ります。

第六回|血振りは足を引く

「生木を裂くように血振りをする」と教わっても、生木を裂いたことがない。そこで安村凰玉が見つけたのは、居酒屋の固い割り箸でした。

血振りは「割り箸、パン!」。納刀では鞘が再び「やめて!」。ジャージ、眼鏡、ちょんまげ姿で窓ガラスに己を映し、刀と鞘には横だけでなく縦の角度がある――「この世は三次元」だと気づきます。

鞘引き、エアコン、「人」の字、セミ、割り箸。覚えたことを頭いっぱいに詰め込み、ようやく基本一がつながり始めた、その時。

隣で基本二を指導していた武田会長の、耳を疑う一言が聞こえてきました。

「ちょっと待って! 私が教わったことと違う!」

安村凰玉を混乱させた、その一言とは――。

第七回|必要な才能は、たった一つ

その日に指摘されたことは、次の稽古までに少しでもできるようにしていく。

復習を習慣にしていた安村凰玉でしたが、唐突に基本二へ進むことになり、気づきます。

「いかん。これ、復習だけじゃダメだ……」

頭では分かっているのに、身体は基本一で覚えた動きをしてしまう。そして、そんな失敗を見逃さず、ニヤニヤしながら指摘してきたのが、のちに良き相棒となる小堀玉鳳でした。

「くっそー! 小堀ー!」

持って生まれた体格、恵まれた運動神経、あふれるセンス。小堀玉鳳の才能に追いつくため、安村凰玉が選んだのは、一回の稽古を三倍、足りなければ五倍やることでした。

武道未経験から錬士七段へ。

その長い道のりに、本当に必要だった才能とは何だったのか。

第八回|できないものを、一つずつできるものに

教わったことができない。ならば持ち帰り、一人で見て、考えて、身体が分かるまで繰り返す。

決して器用ではなかった安村凰玉は、稽古のない日にも自分で場所を借り、できないものを一つずつ、できるものへ変えていきました。

「人よりできないなら、人よりやればいい」

後に錬士七段となる女性剣士の、愚直で熱い稽古の原点。そして物語は、審査と大会という新たな舞台へ向かいます。

第九回|キューバ大使館後援のパーティーで初演武

まだ自分を、武田会長や先輩たちの後ろについていく「おまけ」だと思っていた安村凰玉。

そんな初心者の前に突然、キューバ大使館後援のパーティーで演武する機会が現れます。

「安村さんは、基本一と基本二で。やりますか?」

遠慮すれば、次の機会はない。そう感じた安村の口から飛び出したのは、「やらせてください!」の一言でした。

しかも任されたのは、鵬玉会初の単独演武、その一番手。武田会長の「骨は拾うから」という言葉を胸に、安村凰玉が初めて人前へ踏み出します。

第十回|ちょんまげと、ぽよんぽよん

初めて教わった形「真」を忘れないように、ジャージに帯、前髪はちょんまげ。ベッドの上でぽよーんと揺れながら、手にしたのは山本五十六うちわ――。

笑いに満ちた自主稽古の先で、安村凰玉は初めて先輩たちの審査を目にします。まだ自分を「おまけ」だと思っていた彼女が、後にこの日の呑気な自分を悔やむことになる「まさかのできごと」とは。

第十一回 初めての審査は、撃沈でした

今や鵬玉会副長、錬士七段となった安村凰玉も、初めての三級審査では不合格だった。

なぜ、先輩たちの審査を他人事のように見ていたのか。悔しさの中で、小さなエンジンが動き始める。

そして、神田道場の大掃除で出会った、神のように遠い先代・新名ご宗家。そこへ現れたのは、革パン姿で黙々とトイレを磨く武田会長だった。

第十二回 初段――お情け昇段?

神田道場の大掃除後、先代・新名ご宗家との宴席に残された安村凰玉。道場に響き渡った着信音は、まさかの『仁義なき戦い』だった。

年が明け、新年稽古会で念願の初段に昇段。しかし、目を輝かせて報告した安村に、武田会長が返した言葉は――。

「お情け昇段じゃない?」

喜びは一瞬で吹き飛んだ。誇りも自覚も持てないまま、せめて責任だけは持とうと決めた、安村凰玉の初段時代が始まる。

第十三回「失格して、ようやく信じられた」

先代・新名宗家から「弐段になっていいよ」と認められた安村凰玉。しかし、武田会長の「お情け昇段じゃない?」という一言が、まだ頭から離れない。

迎えた初めての国際大会では、まさかの失格。それでも、その失格のあとに届いた新名宗家の言葉が、安村に初めて自分の居合を信じさせた。

爆笑の初心者時代は、まだまだ続きます。

次回、「マドンナの鵬玉会」第十三回。お楽しみに!


今後も公開順に本ページへ追加していきます。