第18回
宇都宮戦争148年 新選組布陣の社「二荒山神社演武」天然理心流 ×無外流 平成28年の新選組
天然理心流9代目宗家 近藤勇ご遺族
宮川清蔵勇武宗家
148年前、北上を続ける新選組は宇都宮攻城戦を戦いました。
この戦いを描いた小説・ドラマはほとんどなく、ファンにもなじみが薄いのですが、これが激戦であったことは伝わっています。
そしてかつて新選組が布陣したのが、宇都宮市民の心を支える二荒山神社。
この神社へ通じる鳥居下で2016年12月4日(日)に、無外流居合 鵬玉会は演武をすることが決定しました。
それも、天然理心流九代目宗家でいらっしゃり、さらに新選組局長近藤勇のご遺族である宮川清蔵勇武先生の「勇武館」のご一門と一緒です。
ご存じのように、天然理心流は第4代宗家の近藤勇をはじめ、副長土方歳三、一番隊長沖田総司、六番隊長井上源三郎の流派。
無外流は三番隊長斎藤一の流派。まさに148年目に同じ場所で志を継ぐ「平成28年の新選組」といった趣のある奉納演武です。
新選組ファンはぜひお集まりください。
1)戊辰戦争の激戦地、宇都宮で夢のカップリング!場所は新選組が布陣した二荒山(ふたらやま)神社
武田鵬玉(以下、武田) おひさしぶりです。
宮川清蔵勇武 天然理心流9代目宗家(以下 宮川宗家) おひさしぶりです。
武田 このたび、戊辰戦争の激戦地、宇都宮で、しかも実際に新選組が布陣した二荒山神社前で演武を近藤勇局長、土方歳三副長の天然理心流と斎藤一の無外流とが演武する、ということになりました。
宮川宗家 楽しみですよねえ。
武田 そうなんです。しかも宮川先生は実際に近藤勇局長のご遺族でいらっしゃる。ありえない奇跡です。そこでこの演武のタイトルを「平成28年の新選組 天然理心流×無外流」とさせていただきました。
宮川宗家 激戦地ですからね。宇都宮で実際に交渉にあたってくださったのは小堀さん?
武田 宮川先生は、ひの新選組まつりの関係で小堀鵬玉会栃木宇都宮支部長をご存じなんですよね。彼はひの新選組関連の顔ですから。
宮川先生 土方歳三役に選ばれましたからね。
武田 その前年、私が近藤勇役を拝命しました。
2)無外流居合 鵬玉会 小堀恭嗣栃木宇都宮支部長
宮川先生 小堀さんは東京の道場にも来られますか?
武田 しばしば、ですね。私が指導しますが、新名宗家の指導も彼は受けたんですよ。
宮川先生 それはいい!
武田 あとは2~3カ月に一度、私が宇都宮に指導に行くんです。
宮川宗家 今回はその戊辰戦争の激戦地、宇都宮でご一緒に演武するわけですよね。
武田 こんな機会をくださってありがとうございます。
宮川宗家 うれしいですねえ。NHK大河ドラマ「八重の桜」のときに知りましたが、白河にも新選組同好会があるんですね。びっくりしました。日野や会津だけではないんですね。
武田 いまや全国どこにでもある感じですよね。
3)全国の新選組同好会と
宮川先生 そこで白河の新選組同好会のご好意もあり、向こうの市民会館で演武したことがあるんですよ。NHKからは大河ドラマの時代考証の方もこられました。
武田 それでは、全国の新選組同好会の要請があったらご一緒に行きませんか。
宮川先生 ぜひぜひ。宇都宮、白河、会津、函館。新選組がたどった道を少しずつ行っている感じですよね。愛着というか、親しみのあるというか、かつての新選組の魂、気持ちが我々をひっぱっている気がします。
武田 戊辰戦争から150年ほど、そこで新選組幹部の剣であった天然理心流、そして私たち無外流がご一緒にできるのも、言いようのないご縁を感じます。まさに「平成28年の新選組」です。
宮川先生 特に今回の二荒山神社は、実際に新選組が布陣し、激戦したところなんですよね。
武田 それを調べてびっくりしました。
4)現代に武道をやる意味
宮川先生 こうやって、鵬玉会さんの稽古を見ていると女性が多いですねえ。時代でしょうかね。
武田 そうなんですよね。女性が興味を持たれることが多いようです。
宮川先生 武道人口が少しずつ減っている中で、日本のものに興味をもつのはいいことですね。
武田 私は日々の生活の中に仕事や家庭の問題、ひょっとしたら地域や国といったもっと大きな問題を抱えている人がいるかもしれない、そんな問題から逃げずに戦おう、とする気持ち、これを武道で鍛えられるのではないかと思っているんです。
宮川先生 ほう。
武田 そもそも、「生きる」「死ぬ」ということを常に傍に意識するようなものは武道にしかないわけですから。それがひょっとしたら新選組の志をつぐことかもしれないなあ、と思います。
宮川先生 武道を通じて得たものが、それぞれの人の日々の生活に役立てばいいですね。
5)どの武道、流派も素晴らしい
武田 私は極真空手歴が30年あり、それがベースです。
宮川先生 空手を。
武田 それでタイに行ったときはムエタイの元チャンピオンとも戦ってみましたし、キックボクサーやプロボクサー、拳法家とも戦ったことがあります。福岡県の交流試合大会で優勝したこともあります。結果、やっているジャンルの話ではなく、強い人は強い、というのを知りました。昔は純粋に極真空手が最強だ、と思っていましたが。
宮川先生 (笑)。
武田 でもどの武道もどの流派も素晴らしい人がたくさんいる。強い人も多い。それを知ったおかげで、相手が向かってきても腰がひけない、という気持ちはあります。
宮川先生 ほう。
武田 空手のからだのさばき方と無外流居合のさばき方がよく似ているんですね。入口が違っても向かうところは同じなんだなあ、と思いました。武道というのは、薄皮を重ねるように、本当に一歩ずつ、進歩があるのかないのか自覚がないまま、ある日できるようになっている自分に気づく、そんなもののような気がします。
宮川先生 一回休むとまたやり直しになったり、というようなこともありますしね。・・・あそこで稽古していらっしゃる女性はなかなかいいですね。
武田 安村さんですね。彼女は逆袈裟であれば、抜き打ちでも斬れるようになりました。
宮川先生 そうなるまでにどのくらいの期間がかかりますか?
武田 彼女はほぼ週の半分以上稽古し、毎月斬っています。それで2年くらいでしょうか。力に頼らない女性の方が早くできるようになる気がします。
宮川先生 結局稽古量ですよね。
6)宮川先生と近藤勇局長
武田 私は実は天然理心流を学ぼうかと調べたことがあったんですよ。
宮川先生 どこの天然理心流でしたか?
武田 もちろん、本流の宮川先生のところです。
宮川先生 ありがとうございます。
武田 土方歳三副長のご遺族愛さんも、「宮川先生が本流です」とおっしゃっていましたね。しかし、日野は遠かったです。
宮川先生 (笑い)
武田 宮川先生を見ると皆が感動するのは、天然理心流をやられる宮川先生に、近藤勇局長を見るからでしょう。先生は温和な方だと思います。きっと近藤勇局長も普段は温和な方だったんじゃないでしょうか。
宮川先生 叔父の勇も好感を持って皆に迎えられていたようですね。
武田 そんな志を継いだという意味でも、皆に見てもらえるよう、ポスターも用意しましょう。
7)志を継げば呼ばれる
宮川宗家 そうですね。去年の11月に全日本刀道連盟が大会を鹿沼でやられたんですね。そのときに街道沿いの古戦場を通ると宇都宮までの間に元新選組隊士や幕府軍兵士のお墓が点在しているんですよ。
武田 そうなんですか!
宮川宗家 一昨年、茨城県土浦市の土浦市立博物館、日野の日野市立新選組のふるさと歴史館、栃木県の壬生町立歴史民俗資料館、板橋の板橋区立板橋郷土資料館の4か所で資料を移動させながら展示がありました。
武田 凄いですね。
宮川宗家 そのとき私も資料館を回ったんですが、これも「何かに呼ばれたんだなあ」と思いました。
武田 そんなことがあるんですね。
宮川宗家 一昨年京都淀で、戊辰の役の東軍殉難者慰霊祭が行われました。
武田 六番隊を率いた井上源三郎さんが戦死したのが確かそこでしたね?
宮川宗家 千両松です。天然理心流勇武館一門で供養の演武をしたんです。
武田 いいですねえ。
宮川宗家 京都でも機会があればお伺いしたいですねえ。
8)気持ちが150年前からつながっている
武田 ちゃんと気持ちが150年前からつながっているんでしょうね。特に武道を通じて見えるようなときがありますよね。以前「近藤勇の気持ちを感じるとき」と聞いたら「斜の構えをしたときです」とおっしゃったのが凄く印象的です。
宮川宗家 あの形は、手が見えない、相手が迷う、そういう体さばきですものね。それが身につくようにするのが修行だなあ、と思います。近藤勇も「薩摩の武士とやるときは初太刀に気をつけろ」と言ったと言いますが、抜きつけの一撃を見るとなるほど、と思いますね。
武田 私たちも気持ちは新選組三番隊の隊長斎藤一になったつもりで、「これは気ほどの気も見せずに初太刀で斬れるか」とか考えるんですよ。
宮川宗家 最近では斎藤一さんも人気ですからね。
9)浅田次郎先生の新選組三部作
武田 NHK大河ドラマ「新選組!」も人気でしたが、浅田次郎先生が「壬生義士伝」「輪違屋糸里」「一刀斎夢録」の新選組三部作で活き活きと新選組や斎藤一、居合を描かれました。「一刀斎夢録」を書かれた浅田次郎先生は、斎藤一の研ぎの記録まで調べられたそうです。「この時期にこういう刀瑕(きず)がついている」「この刀瑕はどうやったらつくのか」まで考えたそうです。
宮川先生 よく子母澤寛先生が取材に来られたときのことを聞きましたが、作家の先生は考えますねえ。
武田 そういう火はきっと日本全国に小さくともあるんでしょう。私たちもいずれ九州でイベント、大会をやりたいなあ、と思うんです。そのときは来ていただけますか?
10)「平成28年の新選組 天然理心流×無外流」
宮川先生 実は私の母方の祖父は福岡県の秋月藩藩士なんですよ。
武田 えー!私の母方の祖父の系統も秋月藩藩士です。驚きました。やはり人生は運と縁ですね。
宮川先生 そうですか?祖父が生まれたのは文久三年なんですよ。
武田 新選組を名乗る前、後の幹部たちが試衛館から上京する年じゃないですか?
宮川先生 そうなんです。福岡はそういう意味では親近感があるんですよ。ぜひ呼んでください。
武田 ではそんな機会に秋月をご一緒しましょう。ご縁がそもそもあったんですね。
宮川先生 そのご縁で宇都宮二荒山神社の演武を成功させましょう。148年前に新選組が布陣したところ、さぞ、土方達も待ち望んでいることでしょう。 当日は、気合を込めて、恥ずかしくない演武を披露致します。
武田 新選組ファンにも全国から集まってほしいですね。「平成28年の新選組 天然理心流×無外流」ですから。
鵬玉独白
新選組の近藤勇局長、土方歳三副長、副長助勤一番隊沖田総司隊長(組頭)、同六番隊井上源三郎隊長。皆試衛館で揺籃期を過ごした試衛館生え抜きの天然理心流です。
その近藤勇局長のご実家宮川家の清蔵勇武先生が九代目の宗家を次いでいらっしゃっています。
その宮川先生との温かいおつきあいをいただいて、今回の演武につながりました。
先に同じく三番隊斉藤一隊長が無外流と言われています。その大先輩のご縁でしょうか。天然理心流 勇武館と無外流居合 鵬玉会。今に蘇らせるのは見た目ではなく、志なのだと思います。
「平成28年の新選組」
これを通じて、全国の新選組ファンにも本物と出会ってほしいと思います。